トップ   |   放射能測定器の自作   |   放射能測定の結果   |   研究   |   その他   | 
FBログ   |   twilog   |   mixilog   |   youtube   |   アーカイブ&リンク   |  

2. 放射能測定に関する基本事項

■測ろうとしているものは何なのだろうか?
放射能測定に関する基本的な知識と、それを測定するための方法について考えてみます。

(1)放射能と放射性物質、放射線
放射能、放射性物質、放射線。この3つの違いをきちんと述べられる人は少ないのではないでしょうか。私も、原発事故が起きるまではおそらく混同して考えていたでしょう。今でも時々、混乱することがあります。しかし、これから放射能測定を進めていくうえでは、より理解を深めておく必要がありますので、改めて一度、考えてみるようにしましょう。

これらの違いを説明するために、放射能のことを「うんこ」とその「臭い」で例えている話がインターネット上でよく見られます。例えとして分かりやすかったので、これを使って考えてみたいと思います。次のようになります。
  • うんこ=放射性物質
  • うんこの臭い=放射線
  • うんこが臭いを出す力=放射能
実は厳密には、この例えでも不適切なところがあります。それは、我々は放射性物質を目で見つけられないということです。うんこは形や色を見れば経験的にそれがうんこであることが分かるはずですが、どれが放射性物質なのかは我々には分かりません(黄色いドラム缶に入れられていた物ならば分かるかもしれませんが、今はそれ以外に、そこらじゅうにある状態になってしまいました)。

でも、これから測定を続けていけば、どれが放射性物質であるかは「あれは怪しい」「これは大丈夫」と勘が働いてくるかもしれません。我々も生まれた直後はうんこがどのようなものか知らなかったはずですが、長い人生を歩んでいくなかで、あの色、あの形をしたものはすごい臭くて近寄りがたい、そのようなことを体験し、理解してきたはずです。

そのような勘所を得るためには測定をして、どのようなものが怪しいかを知っていかなければなりません。そのためには、うんこの臭いを知覚して避けてきたように、放射性物質が放つ放射線を知覚していかなくてはなりません。ですが、残念なことに我々は放射線を直接、知覚することができません(極めて強い致死的なレベルの放射線の話はここでは触れません)。

我々は、放射線を測定する機械を使って放射線(うんこの臭い)を嗅ぎ分けて、放射能(うんこが臭いを出す力)を持った特定の放射性物質(うんこ)を見つけ出す必要があるのです。

(2)放射線の種類
放射線とは、放射性元素の崩壊に伴い放出される粒子線や電磁波のことでα線、β線、γ線などの種類があります。α線、β線は飛距離が短く、簡単に遮蔽することが出来て、外に存在していても体の皮膚でストッ プしてしまいます。しかし、体内に入ったときは細胞に直接ダメージを与えることになって影響はα線、β線の方が強くなり、大きな問題になります。

一般的な放射能測定器では、測定のし易さや、放射性物質の種類を見分ける(核種分析)ことができるためγ線を測定対象にしています。γ線を測定すれば、核種ごとに発するエネルギーに固有性があり、どのような種類の放射能が、どれ位含まれているのかを推測することができるのです。

放射性核種のなかにはγ線を出さないものもあるので、これだけで全ての放射性物質を見つけることはできないのですが、残念ながら技術的にα線、β線を対象にした放射能測定器を作るのは難しいようです。この点については新たな技術革新を期待したいところです。

γ線を出さない、見つけにくい放射性核種としてSr-90やPuなどがよく挙げられます。 γ線を対象にしたこの測定器では、これらの核種の検出ができません。測定不可能な核種が存在することは、測定者として知っておくべきことです。